これさえ食べれば生きていける?「完全食」と食の未来

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「AR(Augmented Reality)」や「VR(Virtual Reality)」、「人工知能(AI / Artificial Intelligence)」、「シンギュラリティ」といった話題が大いに世間を賑わせた本年。
SF作品で見た空想の世界が、現実となりつつある昨今、食の分野でも未来化の足音が聞こえ始めています。

食事の時間から自由になる「完全食」という概念

近年話題の「完全食」とは?

近年、「完全食」と呼ばれる食品が話題となっています。「完全食」の厳密な定義については様々な議論がありますが、人間が健康を維持するために必要な栄養素を豊富に含んだ食品、あるいは食事のことを「完全食」と呼称することが多いようです。

完全食ブームの発端は、2013年、アメリカ人のロブ・ラインハート氏によって開発された「完全栄養代替食 SOYLENT(ソイレント)」。ベージュ色の粉末「SOYLENT(ソイレント)」を水に溶かしたスムージー状のドリンクを飲むだけで、一食分の栄養が摂取できてしまうというのです。
もともとの開発の動機は、ラインハート氏がビジネス立ち上げ時の資金難で苦労した際、食事を不要にして食費を削減しようと考えたことだったといいます。そこからやがて、食事の時間がもったいないと考えるビジネスパーソンから、最低限の労力で完全な栄養を摂取するという目的での需要が高まり、現在ではジュース、バー、パウダーの三種類が公式サイトにて販売されています。

栄養の確保=時間の確保

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こうしたブームは日本にも波及し、現在「完全食」を謳ういくつかの商品が開発・販売されています。
日本での主な需要は「時間の確保」。
外食やコンビニ弁当では栄養バランスが気になるものの、自炊に時間を割きたくない。寝食を惜しんでもやりたい仕事や趣味のために、時間を確保するという目的で完全食への需要が高まっているというのです。これさえ食べていれば栄養を確保できる、という安心感も需要を後押ししているようです。

咀嚼感や美味しさも追求し、悲壮感を軽減

完全食を概要だけで想像すると、どうしてもSF映画などで目にする、およそ食事とは思えない無機質なものをイメージしてしまいます。
ところが実際には、粉末を水に溶いて飲む以外にも、バーやグミなどの形状で咀嚼感をプラスしたり、パスタにしたり、味に工夫を凝らしたりと、「きちんと食事をしている」という意識を促す工夫も追求されており、完全食だけで栄養を摂取していてもそこまで悲壮感が漂わないというのも需要が高まっている要因のひとつです。

何を、何のために、どう食べるのか?

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オーガニック、マクロビオティック、グルテンフリーなど、「何を」食べるかの議論やブームはこれまでにも度々起こってきました。口から摂取する食べ物は私たちの身体の機能に直接的に働きかけるので、意識が向きやすかったのかもしれません。
これが近年では「何のために」食べるのか、そしてそれを「どう」食べるのか、というところまで関心が向けられています。

食事を「生命活動を維持するための機能」として食べるのか。
それとも「美味しいものが食べたいという欲求を満たすための快楽」として食べるのか。

一日に必要な栄養を手軽に全て摂ることができる、夢のような食事「完全食」。
コンピュータ技術の発展やそれに伴う社会の変化について考えるとき、私たちは食の未来についても考えなければならないのかもしれません。