チョコレートもクオリティ勝負、今流行りの「Bean to Bar」とは?

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本日2月14日はバレンタインデー。
世界各国で「愛の誓いの日」として、男女間でお菓子やお花、カードなど様々なプレゼントを贈り合うバレンタインデーですが、日本では「チョコレートの日」といったイメージがすっかり定着し、チョコレート好きにとっては、あらゆる人気ブランドから限定商品が販売される、まさに年に一度のビッグイベントとなっています。一粒だけで1,000円を超えるチョコレートが飛ぶように売れるというのですから驚きですよね!
今年2018年は、「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」や「ピエール・エルメ」といった高級スイーツブランドが日本に上陸してちょうど20年。あらゆるモノが売れなくなった言われるこの20年間で、チョコレートの市場はなんと約3割も増えたといいます。

チョコレートのサードウェーブ「Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)」

これまで高級チョコレートといえば、ガナッシュやプラリネ、ジャンドゥーヤなどのフィリング(中身)や、形や色などの見た目にこだわりのあるものが多かった印象ですが、ここ最近よく耳にするようになったのが「Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)」と呼ばれるジャンルのチョコレートです。

見た目は「Bar」、いわゆるシンプルな板チョコレートなのですが、カカオ豆の仕入れから、選別・焙煎・摩砕・調温・成形……とチョコレートを作る工程のすべてを自分たちのファクトリーで行うというもので、余計な植物油脂や香料、添加物などを加えずに、それぞれの豆が持つ独特のフレーバーやニュアンスを一枚の「Bar」にギュッっと詰め込む手法は、先日の記事でご紹介したサードウェーブコーヒーの在り方ととてもよく似ています。チョコレート業界にも、シンプルかつクオリティ勝負の波が来ています。

意外と知られていない?チョコレートができるまで

バレンタインシーズンになると、チョコレート菓子を手作りなさる方も多いかと思いますが、作業のスタートは大抵「製菓用チョコレート」を使用するところから。ご自分でテンパリング(調温)もなさるというこだわり派の方もいらっしゃるかと思いますが、その後の風味付けや成形、ケーキやクッキーなど別のお菓子へのアレンジに力を入れることはあっても、カカオ豆を栽培するところから始める!という方はまずいらっしゃいませんよね(笑)

そこで今回は、トレンドでありながらもじつは意外と知られていない「Bean to Bar」チョコレートの肝とも言えるカカオ豆が、チョコレートの原料となるまでの工程をご紹介いたします。

カカオの実は樹の幹に直接実る

Cocoa-pods

カカオ豆という呼び名が定着しているものの、カカオはマメ科の植物ではありません。カカオの樹(学名:テオブロマ・カカオ)というアオギリ科に属する植物で、幹生花(かんせいか)と呼ばれる、樹の幹に直接花や実をつける面白い特徴があります。
カカオの実は、大きいものだと顔の大きさほどもあるラグビーボールのような形をしていて「カカオポッド」とも呼ばれます。品種や生育環境にもよりますが、実の色が緑から黄色やオレンジ、赤になったら収穫をします。

カカオの実は白い

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収穫したカカオの実を割ると、中には「パルプ」と呼ばれる甘く白い果肉が出てきます。
80%が水分というこのパルプは、口にするとマンゴスチンやライチのような甘酸っぱさがあるのだそう。このパルプに包まれた種子が「カカオ豆」です。カカオポッド一つから、大体20〜40粒のカカオ豆が獲れます。この、まったくもってフルーツ状態のカカオ豆が、どうやったら私たちの知っている茶色いカカオ豆になるのでしょう……。

チョコレートは発酵食品だった!

収穫した甘くて白くて水っぽいフルーツ状態のカカオ豆を、今度はバナナの葉で包んだり、バスケットや木箱に入れて、およそ1週間ほど発酵させます。なんと、チョコレートは発酵食品だったのです!カカオ豆を発酵させることで、チョコレート独特の香味物質のもとを作り、豆を死滅させることで発芽を抑えます。
その後、発酵させたカカオ豆を水分レベルが7%未満になるまで天日干しで乾燥させます。こうすることで発酵を完全に停止させて、再発酵のリスクがない状態で出荷、貯蔵できるようになるのです。

こうしたカカオ豆の収穫から発酵、乾燥までの一連の流れは、出来上がるチョコレートの風味に大きく影響するので「Bean to Bar」チョコレートの製造者は現地視察をして、農家から直接買い付けを行うこともあります。
フルーツを発酵させるという点や、収穫からの一連の流れにこだわる点は、どことなくワイン造りにも似ていて、チョコレートとワインの相性が良いのも納得してしまいます。

選別・焙煎・摩砕

ここからの流れはすこしコーヒーにも似ています。
仕入れたカカオ豆から、発酵不十分なものや形の悪いものを取り除き、良質な豆だけを焙煎にかけます。豆の種類などによって、焙煎時間や温度などを細かく調整してベストな焙煎具合を探っていきます。発酵時に生成された香味物質のもとが活かされるのもこのタイミングです。
焙煎が終わったら、カカオ豆を細かく砕き、外側の皮と胚芽を取り除きます。お米の精米のような工程ですね。外皮と胚芽を取り除かれ、粗く粉砕された内側のカカオ豆は「カカオニブ」と呼ばれます。
その後、カカオニブをグラインダーで細かくすり潰すように挽いていきます。カカオニブには約55%の脂肪分が含まれているため、細かくすり潰していくと次第にペースト状になります。これを冷却して固体にしたものを「カカオマス」と呼びます。

そしてチョコレートへ

こうして出来上がったカカオマスを、再び溶かしながらテンパリング(調温)を行います。
カカオマスに含まれる脂肪分「カカオバター」は、高温からそのまま冷やしただけでは綺麗な結晶構造を形成しないため、適切な温度調整をしながら冷やし、安定した結晶構造を形成する必要があります。これがテンパリングと呼ばれる作業で、柔らかな口当たりと艶やかな見た目、滑らかな口溶けを引き出すためには欠かせない工程です。

その後、オリジナルの風味付けなどを行なって成形したものが、チョコレートとなります。

食のトレンドは「クオリティ」と「美パケ」の時代に

こうしてチョコレートが出来上がるまでの工程を見てみると、そのすべてをこだわり抜いた「Bean to Bar」チョコレートが人々を虜にする理由がよく分かります。
皆様はふだん何気なく口にしているチョコレートのパッケージ裏面に表示されている「原材料名」の項目をご覧になったことはありますか?商品に使用されている材料の、重量の割合が高い順に表示する決まりになっているのですが、多くのチョコレートが「カカオマス」よりも先に「砂糖」と表示されていることに気が付きます。さらに「植物油脂」や「全粉乳」、「乳化剤」などが含まれている場合も多くあります。

チョコレートは健康に良い、と言われたりするのは、カカオに含まれるポリフェノールが豊富なことに由来します。ポリフェノールは抗酸化作用が強く、ガンや動脈硬化を引き起こす可能性のある活性酵素の働きを抑えてくれたり、アンチエイジングやストレスを和らげてくれる効果も期待できます。
なので「チョコレートは健康に良い」というよりは、「チョコレートに含まれているカカオポリフェノールが健康に良い」ので、カカオマスよりも砂糖や植物油脂が大量に使用されているチョコレートでは、健康への効果が期待しにくいどころか、かえって糖質や脂質の摂りすぎで肥満などの心配も出てきてしまいます。

その点、「Bean to Bar」チョコレートはカカオ豆の持つ風味を最大限に引き出し、一枚のチョコレートバーに落とし込むアプローチをする「クオリティ」重視のチョコレートなので、カカオマスとカカオバターと砂糖を中核に据え、余計な添加物が含まれておらず、私たちがチョコレートに期待している効果が発揮されやすいと言えます。
サードウェーブコーヒーやクラフトビールが人気を集めているのを見ても、近年の食のトレンドのひとつとして、高い「クオリティ」が求められているのが分かります。

また、インターネット検索で「Bean to Bar」と入れて画像などを見てみると、どれも板チョコと呼んでしまうには勿体無いくらいに、パッケージのデザイン性が高くオシャレなものが多いのも特徴のひとつ。
包装に和紙を使用したり、オリジナルのシルクスクリーンプリントを施したものなど、ブランド毎の個性が光り、「ジャケ買い」ならぬ「パケ買い」をしたくなる美しさが魅力です。

チョコレートとしてのクオリティの高さと、パッケージの美しさを兼ね備えた「Bean to Bar」チョコレートは、あまり大げさになりすぎないちょっとしたギフトにもピッタリですし、自分用に買ってご機嫌になるのにもちょうど良いので、人気が高まるのも納得です。
バレンタインデーだけに限らず、ブランド毎のこだわりが詰まった魅惑のチョコレートバーの数々の中から、お気に入りの味を見付けてみてはいかがでしょう。

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